揖斐急行電鉄4000形電車


概要

揖斐急4000形は、2001年に登場した車両です。

2000年代に入ると、1500V昇圧時から活躍してきた1000形にも車齢30年代後半の編成も出始め、老朽化の進行が深刻になり、そろそろ置き換えの必要性に迫られてきました。さらに、1000形は回生ブレーキを装備しておらず消費電力が大きく、3000形や更新工事でそれと同等の性能に改造された2000形に比べると高速域の性能で劣り、ダイヤを組む際にも制約が生じていました。そのため、1000形を置き換え廃車にするために登場したのがこの4000形になります。

主要機器

揖斐急では、MT比を下げつつ空転せずに高加減速性能を得るため、3000形から軽量なアルミ車体を採用してきましたが、この車両では従来の工法よりランニングコストの削減が図れる日立製作所の工法「A-Train」を採用しました。制御装置に揖斐急の量産車両では初のVVVFインバータを採用した(試験車として3000形VVVF車が存在)ことにより、更に粘着性能が向上し、2M2Tという比較的低いMT比が実現しました。ただし、谷汲線を走行する2両編成車は、急勾配でも安定した加減速を行うため、2M0Tの構成となりました。

台車は谷汲線の曲線の多さを考え、住友金属工業製のボルスタ付きダイレクトマウント式・モノリンク式台車となりました。4両編成車のみ別のボルスタレス台車を履くことも考えられましたが、無理に形式の異なる、しかも新しいタイプの台車を採用するほうが保守面で効率が悪いとされ、定期ダイヤでは谷汲線に入らない4両編成車も同じ台車を履いています。

制動方式はこれまで電磁直通ブレーキが採用されてきましたが、本形式で電気指令式ブレーキとなりました。しかし、そのままでは従来の車両と連結できず揖斐急の路線ではダイヤに大きな制約が生じてしまうため、読替装置を装備しています。制御方式・加減速度等の差から乗り心地は悪化してしまいますが、それよりもダイヤの柔軟性を優先したようです。これによって2000形(更新工事後)・3000形と共通の運用が組むことができるようになっています。1000形とも一応ながら連結できるのですが、高速域の加速にそれほど重点を置いていない1000形と連結しては4000形のせっかくの性能を殺してしまうことになるため、その運用はラッシュ時の数本、それもそれほど速度を出さない普通列車のみに限定されています。

車体・内装

前述の通り日立製作所による「A-Train」を採用したアルミニウム合金によるダブルスキン構造を採用しています。

前面は黒を基調としており、貫通扉に揖斐急3000形から採用された「揖斐急清流ブルー」と呼ばれる青色と赤色のアクセントを配置したシンプルなものとなっています。

車内のイスに関してですが、3000形の後期車で、新たな試みとして採用されたクロスシート配置ではラッシュ時の混雑が激しくなり、ドア付近に乗客が固まるという難点がありました。更に、短距離利用の乗客にとってはクロスシートは使いづらいものとなりますから、車端部にしかロングシートの無い3000形の配置では乗客によってはサービス向上とは言い難いものでした。こういった点を改善すべく、4000形では下図のような特殊なセミクロスシート配置とし、通路を広くすることでドア付近に乗客が固まるのを防ぎ、ラッシュ時の混雑緩和と閑散時の居住性の両立を図りました。更に、どこのドアから乗ってもロングシートかクロスシートのどちらかを選択できるというメリットも有ります。こういった配置は、他社ではJR東日本の701系・E127系やJR四国1500形7次車にも見られます。

窓にはUVカットガラスを採用しています。

行先表示器にはこれも本形式で揖斐急初のフルカラーLED式を採用。車内にはドア上部に千鳥配置でLEDによる案内装置を設置し、乗客へ分かりやすい案内をできるようになりました。後期に登場した編成からはLCDモニター式となりました。

(名鉄(みかん)氏にご提供いただきました。)

主要諸元(仮)

形式 4000形
営業最高速度 110km/h(1000形との併合時:100km/h)
起動加速度 3.0km/h/s
減速度 3.7km/h/s(常用最大)
4.2km/h/s(非常)
全長 18m
駆動装置 TD継手式平行カルダン
制御装置 IGBT素子VVVFインバータ(日立・三菱製)
台車 ダイレクトマウント式・モノリンク式空気ばね台車(住友金属工業製)
制動方式 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ・全電気ブレーキ
保安装置 揖斐急式ATS(IB-ATS)
製造メーカー 日立製作所

編成表

  ←岐阜    揖斐北方・海津市・谷汲→
4両編成 3100 3200 3300 3400
Tc1 M2 M1 Tc2
2両編成 3500 3600
Mc1 Mc2

もうちょっと分かりやすく!

客:揖斐急もついに標準型電車ですか…。

中の人:標準型電車だからって侮るなかれ。この電車にも工夫がいろいろ詰まってます。

客:ほう…。
中の人:まずこの電車の一番の特徴として挙げられるのが、座席の配置ですよね。
客:確かに、他社ではなかなか見ない配置ですね。他に採用されてるのって、JR四国の1500形やJR東日本の701系とかE127系くらいですか。
中の人:この配置を採用するに至った経緯はいろいろあるんですが、まず3000形の失敗を考え、改善することが求められました。快速急行の増発のためにバブル期に登場した後期車では、近鉄5200系やJR西日本221系等で採用されつつあった「三扉転換クロスシート」を、新たな試みとして採用しました。それまでほとんどの車両の座席がクロスシートでしたから、遠距離利用客や観光目的でご利用になるお客様には割と好評だったみたいですね。
客:なら良かったんじゃないですかね。
中の人:ただ、揖斐急では、通勤通学利用の、それも比較的短距離でご乗車されるお客様が中心です。昼間や休日なんかはまだよかったものの、平日朝のラッシュ時にはとんでもない混雑になってしまいました。
客:じゃあなんで採用したんですか…。
中の人:お隣のJR東海さんが117系等の転換クロスシート車を快速に投入したり、穂積〜岐阜駅間に西岐阜駅を新たに開業させており、穂積周辺〜岐阜にかけてのお客様を奪われないよう何かしら対策が必要だと思われたのでしょう。また、昼間はガラガラなのにロングシートってのも勿体無い感じがしたわけです。
客:だからって混みまくってて座れないんじゃ本末転倒でしょう。
中の人:ですから、この電車では特に座席の配置をどうにかすることを考えられました。3000形では通路が狭いせいでなかなかお客様に奥へ詰めて乗っていただけず、ドア付近に固まってしまうという状態になりました。ですから、候補として、1+2のクロスシートにし通路を広めにとるという案がありましたが、着席定員が減ってしまうという点から却下されました。また、名鉄さんの3300系・3150系、2200系等に採用されている、「ドアごとにクロスシートとロングシートを配置する」といった案も出ました。しかし、これもやはりドア付近にお客様が固まるのは変わらないという考えもあり、現に名鉄さんも3150系の後期車でオールロングシートに仕様変更されてしまっています。こういったいろいろな案を出しながら、着席定員とラッシュ時の詰め込みを両立できるとして採用されたのがこの配置です。
客:なんであんな配置なんだって思ってたけど、そんな理由があったんですね。
中の人:ただ、台車が最近流行のボルスタレス台車じゃなかったり、2両編成車は付随車を付けなかったりしてお金もかかり、当然3000形が製造されていた時よりも景気はよくありませんから、削れるところはしっかり削ってます。窓ガラスをUVカットのできるものにした代わりにカーテンを省略したり、全電気ブレーキを採用したり無塗装化したりして保守の手間を省いたり。
また、1つだけ難点があって、この車両単体若しくは同形式と併結した場合はかなり運転しやすいと運転士からの評価も概ね良好なんですが、他車との併結となるとそうもいかないんです。1960年代の車両と2000年代の材質の違う車両が連結して編成美の欠片も無いのはどうでもいいとして、問題が性能差です。いくら同じような性能に合わせてあるとはいえ、感覚が多少異なるので、併結している車両を考慮して運転しなければいけないのが難しいところです。しかも3000形と4000形4両編成車は共通で運用を組まれていますし。
客:でも鉄道ファン側にしてみれば大きなネタ要素となるので美味しいです!!!
中の人:………運転する側の身にもなれって感じですね。